2006年上海市経済

  • 投稿日:2007.01.18
    • 駐在員レポート

先日上海市の対外経済貿易情況説明会が開催され、2006年の経済状況と2007年の見通しが発表された。上海市側からの説明によれば、GDPの総額は初めて1兆元を超え、その伸び率は12%と15年連続の2桁成長になるという。WTO加盟後5年となった2006年は、上海への貿易面や外資導入で大きな成果があったとの発表であった。今回は、貿易・投資の面について紹介したい。

まず、貿易面では、貿易総額が2,274億米ドルで前年比22.1%増加、うち輸出は1,136億ドルで前年比25.2%の増加、輸入は1,138億ドルで前年比19%の増加となった。

特徴としては、これまで輸入超過だった貿易が、輸出入のバランスが取れ、貿易赤字の金額が大幅に減ったことが挙げられる。また、輸出先に関しては、これまでの「米国、欧州、日本、香港」などへの輸出に加え、新興市場への輸出の割合が増えた。

貿易の増加に伴い、上海港の取扱いコンテナの量も大きく増加している。コンテナ貨物の取扱量は2,171万TEUに達し(前年比20%の増加)、2005年12月に開港した洋山深水港のコンテナ取扱量は323万TEUに達した。コンテナ取扱量では、香港、シンガポールについて世界第3位であるが、貨物の取扱量では、5億3,700万トンで2位のシンガポールを1億トン引き離し、世界第1位となった。

次に、投資面では、外資企業による上海への投資は、4,061件、145.7億ドル(契約ベース)で、特徴としては、製造業の投資からサービス業の投資への移行がより鮮明になってきた。

2006年のサービス産業への外資投資は件数が2,962件、金額で97.6億ドル、投資に占めるサービス業の割合は件数で73%、金額で67%に達している。

上海の経済発展にとって外資企業は非常に重要な役割を担っている。それは、上海市の輸出総額の66.8%を外資企業が占めていること、外資企業の就労人口は168万人に達し、上海市労働人口の四分の一を占めること、上海市のR&Dセンターの75%は外資企業であること、外資企業の販売額は前年比12%増の1.4兆に達し、利潤も約3割増加した(2006年11月現在)ことからも伺え、また上海市政府も外資企業の重要性を強調している。

しかし一方では、外資企業の投資環境が以前よりも厳しくなっているとの声も聞かれる。

中国商務省が発表した2006年の地域別内訳によると、日本企業の中国への投資は45億9800万ドルで前年比29.58%の大幅減少となった。(実行ベース)大幅減少の原因は、05年に自動車関連の大型投資が一段落したためとしている。また、人件費などの高騰、土地、電力、水の制限などの投資環境の変化、外資誘致政策の見直し、長期的な人民元の切り上げなども背景にあるといえる。

特に、企業所得税については、これまで、外資企業に対しては優遇税制が取られていたが、3月の全人代で修正され、税率が25%程度になるといわれている。(中国企業は33%、これまで外資は17%)

また、人件費については、上海市では、2006年9月に最低賃金が750元/月(前年比8.6%の上昇)に上昇したのを初め、ある人材派遣会社の都市別昇給率調査では、上海市が7.7%の上昇率で全国トップとなり、賃金の上昇に伴い、人材の確保が困難になっている。

上記のような環境変化から、日本の企業等関係者からは「第3次対中投資ブームは終わったのではないか?」との見方出ている。確かに、製造業のような大掛かりな設備を必要とする大型の投資の時代から非製造業中心の投資の時代に変わっているのかもしれない。

2007年の上海市政府の経済運営方針も、「量より質」へと重点が移された。

経済の発展のスピードを重視するのではなく、「省エネ」「環境」をキーワードにした環境重視政策へ転換、特に省エネには力を入れ、エネルギーの高消費型企業(製鉄や化学工場で、エネルギーを大量に消費する割には、製造する製品に付加価値がないような企業)や汚染物質排出企業については、随時淘汰してゆき、概ね800社を3年間で閉鎖するという。

産業誘致に関しても、「量より質」に重点を置き、4つのセンターの建設(経済、金融、貿易、国際海洋運送)を目指し、サービス分野に重点を置いた投資誘致政策を推進するとしている。サービス分野の発展には、2010年開催予定の上海万博が大きな役割を担うため、政府は万博準備にも2007年以降、本格的に力を入れてゆく。

政府の投資誘致政策は、より多くの外資企業誘致から、地域の発展に有益な企業を選別して投資誘致をする姿勢がより鮮明になってきていることがうかがえる。

香港返還後10年、WTO加盟後5年が経過し、上海市への投資の形態は大きな曲がり角に来ているようである。

上海市2006年の主要経済指標

項目 増減(%)
GDP(億元) 10,296.97 12.0
貿易総額(億米ドル) 2,274.89 22.1
外資導入(億米ドル、契約ベース) 145.74 5.4
固定資産投資(億元) 3,925.09 10.8
社会消費品小売総額(億元) 3,360.41 13.0
新規増加就労人口(万人) 66.30 1.8
登録失業率 4.4

上海市への外資投資の推移(契約ベース)

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出展:上海市統計年鑑、NNA、時事通信、日本海事広報協会統計

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