2005上半期の上海経済
- 投稿日:2005.08.15
- 駐在員レポート
上海市統計局の発表(7月20日)によると、2005年上海市の上半期の実質GDP成長率は、10.3%となり、92年からの2桁成長率を維持した。中央政府のマクロコントロール政策の効果が現れ、昨年同期(14.8%)よりも4.5ポイント下落し、緩やかに減速はしたものの、中国全体の成長率9.5%を上回り、高成長は続いている。
成長率が鈍化した主な理由は、自動車在庫調整による生産減と不動産投資の低迷。
貿易については、輸出額が426.6億ドルで前年同期26.4%の増加、輸入額は445.1億ドルで前年同期6.6%の増加となった。
輸出は、ハイテク製品等の輸出が好調であり前年同期比15.5%増となった。
輸入は、製造業の設備関係の輸入の減少等により6.6%の伸びにとどまった。
投資については、投資コストの上昇や上海市への投資を行う業種の高度化(かつての労働集約型からハイテク、環境等の高付加価値業種への移行)により、件数は16.9%の減少となったが、投資金額(契約ベース)は15.5%の増加となっている。
上海では、人件費や土地コスト等の上昇があり、製造業投資に一服観が広がっている。
上海市労働・社会保障局の調査によると、上海市内の企業の「人材コスト」(給与、福利厚生等)は、労働者1人当たり平均5万5,128元で、5年前の1.5倍に上昇している。
一方、第3次産業(物流、保険、金融、飲食業)等への投資は増加傾向にあり、上海を従来の製造基地から市場としてとらえ、投資も第三次産業への投資が徐々に多くなっている。
消費については、前年比10.9%の伸びで、外食消費が3割の伸びと最も大きくなっている。ついで、家具や室内装飾品が約2割、食品、衣類が約1割の伸びで、テレビ、DVD、カメラ等の家電の伸び率は1割以下となった。
上海市政府の下半期の予想では、不動産の先行きは不透明であるが、自動車販売の回復や消費、輸出等の伸び率は2桁となるので上期より加速すると見込んでいる。
2005年上半期の主要経済指標
項 目 | 単位 | 2005年 | 増加率 |
国内総生産(GDP) | 億元 | 3,930 | 10.3% |
輸出額 | 億元 | 426 | 26.4% |
輸入額 | 億元 | 445 | 6.6% |
投資件数 | 件 | 1,909 | ▲16.9% |
投資額(契約ベース) | 億米ドル | 71 | 15.5% |
社会消費品小売総額 | 億元 | 1,409 | 10.9% |
都市住民可処分所得(1人当たり) | 元 | 9,657 | 13.4% |
(上海市統計局発表)
人民元の切り上げの影響
7月21日夜中国の人民銀行は、人民元の対米ドル相場を現行の1米ドル=8.28元から2.1%切り上げ、1米ドル8.11元を基準とすると発表した。また、これまで事実上固定していた対米ドル管理変動相場(実際は元を米ドルにほど固定しているドル・ペッグ制)を見直し、ドル以外の通貨相場も参考にする通貨バスケット制に準拠した制度へ移行すると発表した。
人民元の切り上げについて、上海周辺に進出している福島県関係企業からその影響について聞取りした結果について紹介したい。
<繊維(ニット)製造企業>
- 影響はある。製品の100%を日本への輸出となっているため。
- しかし2%程度では現時点では影響は少ないと考える。
- 当社は付加価値の高い製品であるため、2%くらいの切り上げであれば吸収は可能である。しかし低価格の商品を扱っている企業は、2%の切り上げでも価格を吸収することが難しいのではないか。
- 現時点では問題ないが、半年後等は必ず10%程度の切り上げとなってくるとつらくなる。
- 繊維業界では、会社を人民元圏以外(ベトナム等)に移転する動きもでてきている。
<電気部品製造企業>
- 現時点(2%程度)では影響は少ないが、今後、切り上げ幅が大きくなると問題になる。今後は、国内取引の量を増やしてゆきたい。
- 人民元圏外に工場を移転することは現時点では考えていないが、今後新工場の建設が必要な場合は、場所の選定(中国におくべきか、他地域にするか)を慎重に考える必要がある。多分中国以外の地域への建設になると思う。
<自動車部品メーカー>
- 製品の出荷は主に国内であり、今回の切り上げによる影響は少ない。
- 日本からは、精密部品を一部輸入しているが、輸入に関しては、プラスに働くと考えている。
福島県企業は繊維、電気電子部品、自動車部品等が上海市周辺に進出しているが、主に輸出を主としている繊維関係の企業は今回の切り上げについて今後の再切り上げもにらんで警戒しているようである。その他、電気電子、自動車については、日本からの精密部品等の輸入の部分もあり、輸出と輸入で相殺される部分もあること、またきり上げ幅も2%と小幅であったため現時点の影響はないと語っていた。
今後の再切り上げについては、各企業とも再切り上げはあると考えているようだ。
現時点(8月初旬)で、人民銀行総裁は当面は再切り上げはないと語っているが、いずれ再切り上げが行われるとの見方が一般的である。
今回の切り上げは、各企業ともある事前に程度予想しており、また切り上げの幅も想定の範囲内であったことから、大きなダメージを受けたという企業はないようであるが、今後の再切り上げへの対応等について懸念を示しているようである。
資料出展
- 2005 7月21日 解放日報
- 2005 7月13日、22日、27日
- 2005 8月上期号 ジェトロ上海「ジェトロニュースレター」