中国携帯電話事情

  • 投稿日:2006.05.23
    • 駐在員レポート

中国における携帯電話普及率

中国情報産業省の発表によれば、2006年4月末の中国国内の携帯電話加入者数は4億1664万人に達し、普及率は30.3%となった。しかも、この数字は、都市も農村もひっくるめた数字であり、実感として、中国の都市部では日本以上に一般庶民の隅々まで携帯電話が普及しているように思われる。ちなみに上海市内では、携帯電話加入者が1500万人を越え、普及率は84%に達し、70%強と言われる日本の平均普及率をはるかに超えている。

激しい販売競争

中国の携帯電話市場は激しい変化を続けている。携帯電話が普及しはじめた90年代は、2大外資メーカーのモトローラとノキアが70%以上のシェアを占めていたが、2000年代に入ると、携帯電話が中所得者層や一般大衆層にも普及してゆき、この市場の動きに素早く対応した中国国産メーカーが低価格戦略や地方への販売網の拡大で急成長を遂げた。しかし、カメラ付きやカラー画面の機種が発売されるようになると状況は一変。消費者は、ただ価格が安いだけではなく、品質やデザイン、機能にもこだわりを持つようになり、先端技術や研究開発力のある外資系メーカーが再び巻き返しを図ることとなった。2005年の販売シェアをみると、上位3位(全体の46.7%)を、ノキア、モトローラ、サムスンの外資系メーカーが占め、一時は6割にまで達した国産メーカーのシェアは、4割を割り込むまでになってしまった。

苦戦する日系メーカー

欧米や韓国系の外資系メーカーが健闘する中、日系メーカーは苦戦を強いられている。2005年の販売シェアを見ると、NECが12位で2.1%、松下が18位で1.0%、三菱、京セラ、三洋はそれぞれ1%にも満たない。NECは中国での携帯電話事業の建て直しのため、全額出資の現地法人武漢NECに265億円を増資し、高級機種に絞り込んだうえで経営合理化を進め巻き返しを図ろうとしている。また、松下は海外戦略の見直しの中で、中国でも主流である第2世代携帯電話事業からは撤退し、第3世代携帯電話に経営資本を集中することを決めた。さらに2005年3月には東芝が、2006年2月には三菱が中国市場から完全に撤退した。

北京青年報は、日系メーカーの失敗の原因として次の4つの理由を指摘している。

  1. 現地化の遅れと中国市場に対する理解と研究の不足
    日系メーカーの中国拠点は幹部がほとんど日本人であり、中国人の視点で市場を見ることができず、中国人消費者のニーズに合う製品が生み出せない。
  2. 製品の多様性の乏しさ
    商品のバリエーションが乏しく、新製品への更新も遅いため、消費者の多種多様なニーズに対応できない。
  3. 価格の高さ
    欧米系は中核部品を除いて部品の現地調達が進んでいるが、日系は多くの部品を日本からの輸入に頼っており価格競争力がない。
  4. 保守的な営業戦略
     
    日系メーカーは、販路の開拓や広告に十分なお金をかけず、また総代理店方式の販売方法も中国の実情には合っていない。

今後の展開について

中国でも2006年に入りいよいよ第3世代携帯電話の実用化に向けて動き出した。日本では、2001年に世界に先駆けて第3世代携帯電話のサービスが始まり、NTTドコモはFOMA、auはWINというサービスを提供している。第3世代携帯電話の特徴は、高速データ通信が可能なことで、すでにこの特徴を生かした動画の配信やテレビ電話機能、電子マネー機能をもつハイテク電話機が実用化されている。今後、技術的に優位性をもつ日系携帯電話メーカーが、どのように中国の実情に適合しながら市場に食い込んでいくのか注目される。

(資料)2005年の中国携帯電話市場シェア〔北京青年報(2006.3.12)〕

順位 メーカー シェア(%)
ノキア(フィンランド) 23.8
モトローラ(アメリカ) 13.3
サムスン電子(韓国) 9.6
寧波波導(中国) 6.1
夏新電子(中国) 4.2
ソニーエリクソン(日本・スウェーデン) 4.1
レノボ・グループ(中国) 4.1
TCL集団(中国) 3.7
康佳集団(中国) 2.8
10 海爾集団(中国) 2.5
12 NEC(日本) 2.1
18 松下電器産業(日本) 1.0

(参考資料)

  • 北京現代商報(2006.5.22)、新聞晨報(2006.5.18)、北京青年報(2006.3.12)
  • NNA(2006.3.1)、総務省「平成17年通信利用動向調査」(2006.5.19)
福島県上海事務所 大島康範
(本文は、「グローバルふくしま」NO.107号に寄稿掲載したものです)
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