駐在員雑感(第24回) 「跳槽」

  • 投稿日:2006.10.19
    • 002:職員コラム

上海事務所の設立当初から働いてくれた中国人スタッフが10月に退職した。
理由は通勤が大変ということ。彼女は2年7ヶ月当事務所に勤務したが、片道1時間半の通勤。よくがんばって勤務してくれたと思う。

通常中国では、日本と違って転職を繰り返し、給与アップを実現してゆく。これを中国語では、「跳槽」(Tiao Cao)という。日本人のように長くひとつの会社に勤めるという考えは一般的でない。
中国での従業員の採用形態は、会社が直接雇用する方法と人材派遣会社と契約して、従業員を派遣してもらう方法がある。当事務所は、営業活動ができない「駐在員事務所」という位置づけであるため、直接従業員を雇用することができず、人材派遣会社経由の採用となる。日本で言う「正社員」の概念が、「雇用期間を限定しない労働契約を、会社と直接結んでいる従業員」ということであれば、当事務所のような雇用形態は、契約期間も1年ごとの更新であり、まさに、「非正社員」ということになろう。
このような雇用形態のため、一般的にひとつの会社で長く働くというよりは、自分の能力を武器にしてステップアップしてゆくのが普通である。

上海の日系企業関係者からは、「定着率が悪くて困る。」「給料を上げないとすぐに転職してしまう。」という話をよく聞いていたが、自分のその立場になって、はじめてその苦労を実感した。やはり、それなりの備えは大切である。

一方、我々雇う側にも問題があることが多いという。
上海市内の人材派遣会社の社長は、「日本企業は、通訳で採用したのに、その人に経理や営業をやらせたり、採用に際しても、具体的な業務をはっきりさせずに、仕事は採用してから決める、といったケースが多い。中国人は、自分の専門能力で飯を食っているので、これでは定着しない。」という。
つまり、彼らは通訳なら通訳、営業なら営業、自分の持っている専門能力を強くアピールし、採用側と交渉する。これが中国式。オールラウンダーを希望してもなかなか人材は見つからず、採用後に、ジョブローテーションを行なったりすることもあまり意味がないという。

 

職員をつなぎとめるために、「賃金アップ」「ポスト」「海外研修」などの手段はたくさんあるようだ。しかし、職員がその会社で自分の能力を高めることができ、給与以外でその会社や仕事に魅力を感じること、これらをいかに演出できるかが、雇用者側の課題のようだ。

2006年10月19日
福島県上海事務所 安達和久
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