上海の水産物卸売り市場

  • 投稿日:2008.02.13
    • 003:上海地域アドバイザーレポート

ここ二、三年の間、日本から中国への農水産物の輸出が盛んになっているため、私が携わっている通訳業務においても、上海市内の水産物卸売市場への視察が多くなっております。今回の経済レポートでは、上海の水産物卸売市場の概況について皆さんに紹介したいと思います。

 【上海の水産物卸売市場の現状】
中国最大の経済都市である上海市は、水産物の消費量が国内で最も高い都市です。年間消費量は、80万トンから100万トン前後に達していますが、上海市の漁業生産量は40万トン前後に留まっており、消費量の大半は、国内の水産物産地や海外からの輸入に頼っています。これらの水産物を取引する場所は、主に以下の場所で行われています。
①上海銅川水産物卸売市場
上海市の北西部の「銅川路」と「曹楊路」エリアに位置し、貨物列車のメイン駅である「上海西駅」、市内環状線、外環状線及び上海―南京高速道路に囲まれ、また虹橋空港までもわずか20分前後という交通の非常に便利な場所にあります。
この市場は、1996年10月に市政府関連の貿易商社が1,200万元を投資して設立し、敷地面積が14,000㎡、建築面積が8,000㎡でスタートし、その後、取引の規模拡大に伴い、さらに2,000万元の増資が行われました。現在、敷地面積は20,000㎡、入居テナント数が800店舗以上に達し、上海市内において最大級の水産物卸売市場となっています。この市場では、国内外の魚貝類、えび、蟹、くらげ及び冷凍水産物などの中高級水産物と加工品が取引されています。上海市の水産物の年間取引量は140万トンで、そのうち半分以上がここで行われ、年間取引金額が30億元以上を超えているといわれています。市場関係者によると、商品の中で空輸による入荷がかなりの割合を占めているようです。この市場が設立されてから、周辺には個人経営の水産物や食品店が20ヵ所以上建設されたほか、家禽市場、果物市場、野菜市場、干物市場なども多数集まっており、上海市の食品供給の中枢地帯となっています。このほか、市場の周辺では物流・倉庫業をはじめ、銀行業、ホテル、中高級レストラン、娯楽施設、ショッピングセンターなどの施設も数多く生まれ、水産物を中心とした上海西北部における一大商業地帯となっています。
②上海曹安水産物卸売市場
この市場は、上海市政府商業委員会及び現地政府の第三セクターが1,100万元を投資し、1999年7月に開業した水産物の卸売市場です。場所は、上記銅川水産物卸売市場からやや南西部にあり、上海―南京高速道路まで1キロ、虹橋空港まで8分という大変便利な場所にあります。
市場の敷地面積は、33,000㎡で、そのうち取引エリアが13,000㎡、通路が5,000㎡、駐車場が9,000㎡となっているため、銅川市場に比べれば非常にゆったりした感じのする市場です。
この市場の一番の特徴は、鉄道が市場内に敷設されており、冷凍貨物が2,500立方メートルの冷凍庫に直接入荷できることです。主に魚類の取引を行い、取引品種によって淡水類、海水類及び冷凍類という3つの部分に分かれ、隣接している関連会社である「上海滬西水産物市場」と合わせて年間の取引量が20万トン以上に達しています。
③上海中心水産物卸売市場
この市場は、以前からある黄浦江沿いの「魚市場」がはじまりで、上海水産集団(国営企業)が経営母体となっています。場所は上海市の北東部にあり、小型の貨物船が停泊できる港に隣接しています。5万㎡を超える膨大な敷地の中に、専用の埠頭、倉庫、食品加工工場や冷凍庫などが点在しています。取引施設の面積は2,000㎡前後で、農業部と各地の水産市場とがオンラインで結ばれており、水産物の相場情報が大型ディスプレーに映しだされ、全国各地からやってくる商社や個人経営者がそのディスプレーを囲んで日々売買を行っています。
取引量は、曹安水産物卸売市場とほぼ同じですが、情報が入手しやすいため、上海市の水産物の相場形成や需給関係などにおいては、重要な役割を果たしています。

 【上海の水産物卸売市場の今後の動向】
これら3つの水産物卸売市場は、上海市内の比較的交通の便利な場所にあるため、最近では、周辺地域に交通渋滞、衛生・環境問題が発生し、地域住民の不満、治安問題などが顕著化しております。また、上海市の最新都市計画によると、3年後の上海万博の開催をめどに、銅川水産物卸売市場と曹安水産物卸売市場の付近にはCBD(中央ビジネス地区)が建設される予定で、また、上海中心水産物卸売市場付近には、黄浦江沿岸の観光地再開発計画があり、いずれの施設も立ち退きが必要になっております。
これら施設の移転先として、2007年5月に上海市北部の黄浦江と揚子江の合流付近に、「上海東方国際水産センター」が建設されました。ここは、上海市政府や上海水産集団などの産官企業グループが5.5億元を投資して建設したもので、敷地面積が36万㎡に達し、既存の銅川市場などの面積の数倍となります。初年度(2008年)の年間取引量40万トン、取引金額は50億元を予定しており、上海市の水産物の流通量の大半を握ることとなります。また、長さが250m以上の岸壁、3,000トンクラスの漁船が停泊できる5つの埠頭と34,000トンを超えるスーパー冷凍庫も完備しており、銅川市場、曹安市場及び中心市場の受け皿として、国内屈指水産物卸売市場としての機能を有していることに加え、飲食業、ホテル、娯楽施設なども備えた一大レジャー施設となることを目指しています。
今後ますます活発になることが予想される日中間の水産物貿易において、上海東方国際水産センターはより重要な役割を果たすことになると考えられます。

参考資料:上海水産協会HP 第一食品NET 新聞晨報

 2008年2月12日
福島県上海事務所 仲琪

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