上海市のロックダウンに伴う従業員への処遇について

  • 投稿日:2022.05.25
    • 009:ビジネスニュース

 3月上旬から上海市内では小区(マンション)単位の48時間封鎖が始まり、一部の従業員が在宅勤務をせざるを得ない状況が発生しておりましたが、4月1日には上海全市内がロックダウンとなり、もうすぐ2ヶ月が経過しようとしています。在宅勤務が可能な業務もありますが、製造業の工員等在宅では業務が行えない従業員の処遇について、今回解説いたします。よくある質問も記載しましたのでご確認ください。

  • 従業員への処遇に関する指針は?
     2020年2月7日に人力資源社会保障部、中華全国総工会、中国企業連合会/中国起業家協会、中華全国工商業連合会から公布された「労使関係安定と企業の操業・生産再開の支持に関する意見」(人社部発[2020]8号)を指針とします。
     従業員への対応については当該意見の、(二)労働者使用問題への柔軟な処理について、(三)賃金待遇問題の協議による処理について、をご参考ください。
    <原文>http://www.gov.cn/zhengce/zhengceku/2020-02/08/content_5476137.htm

———————————————————————————————————

  1. 労働者使用問題への柔軟な処理について(一部抜粋)
    ・感染流行の影響を受け、従業員が予定時期までに業務に戻れない、あるいは企業が操業・生産を開始できない場合、在宅勤務により業務上の任務を遂行するよう指導する。
    ・在宅勤務を行う条件が整わない企業は、従業員と協議のうえ、年次有給休暇や企業が独自に設けている福利休暇など、各種の休暇を優先的に使用する。
    ・隔離措置または政府が実行する緊急措置による影響を受け、正常に労働を提供できない従業員に対しては、労働契約を解除したり、派遣労働者を派遣会社に戻したりしないよう企業に求める。
    ・規定に合致し操業を再開する企業では、企業が必要な感染防止策、労働者保護の措置を提供し、従業員の業務復帰を積極的に促進するよう指導する。
    ・勤務の再開を望まない従業員に対し、企業の労働組合より説明、説得し、速やかな業務復帰を指導する。説得・勧告しても応じない、あるいはその他の正当でない理由により業務復帰を拒否する場合は、企業に法による処理を行うよう指導する。
  2. 賃金待遇問題の協議による処理について(一部抜粋)
    ・感染流行の影響を受け、勤務再開が遅れたり、業務に復帰できなかった期間において、各種の休暇をすべて使用しても、なお正常に労働を提供できないか、その他の正常に労働を提供できない従業員に対しては、操業・生産停止期間中の賃金支給に関する国の規定を参照し、従業員と協議のうえ、1回の賃金支給周期内においては、労働契約の規定に沿った賃金を支払うこととする。1回の賃金支給周期を超えた場合は、関連規定により生活費を支給するよう指導する。
    ・感染流行の影響を受け、企業の生産経営が困難な場合、企業が民主的プロセスおよび従業員との協議を通じて賃金報酬の調整、交代制勤務、労働時間の短縮などの方式により、労働条件の安定を図ることを奨励する。
    ・一時的に賃金の支払い能力がない企業に対しては、企業が労働組合または従業員代表と支払いの延期に関し協議することを進め、企業の資金繰り負担を軽減すべくサポートする。
    ・法による隔離措置により正常に労働を提供できない従業員に対し、企業は正常に労働したものとして、その従業員の賃金を支払うよう指導する。隔離期間終了後も勤務を停止して治療を受ける従業員に対しては、医療機関の関連規定により賃金を支給する。

———————————————————————————————————

 上記の「意見」でも触れている問題はありますが、以下によくある質問を簡単にまとめましたのでご参考ください。

  • よくある質問Q&A

Q:基本的に小区の封鎖や上海のロックダウンで出勤出来ない場合、企業としては基本給を支払うのでしょうか?
A:
①小区の封鎖や上海のロックダウンで出勤出来ない場合
Ⅰ:企業が従業員に在宅勤務での業務を提供できる場合、労働契約に基づく正常な給与を支払います。
Ⅱ:企業が従業員に在宅勤務での業務を提供できず(例えば工場での作業業務のみ可能、即ち正常な労働を提供できない場合)、有給休暇を使用できます。有給休暇を使用する場合、相応の給与を支払います。
②小区の封鎖や上海のロックダウンで、工場(会社自体)が正常に稼働していない、生産停止の場合
Ⅰ:もし在宅勤務の業務もて提供できず、有給休暇も使い終われば、1ヶ月目は労働契約により正常な給与を支払い、2ヶ月目から生活費を支給します。一般的に上海の最低賃金を支払います。
 但し、業務・生産停止の規定を参照し、最低賃金の支払いを行う場合、争議が起きやすいと考えます。
 従業員に業務・生産停止による最低賃金を支払う場合、争議を回避するため、以下の手続きが必要となります。
(1)まず業務・生産停止の決議(定款の規定により、董事会又は株主会)を用意すること
(2)企業は従業員に業務・生産停止の民主公示手続きを行うこと
(3)事前に企業の所在地の労働保障部門に告知し、了承を頂くこと

Q:会社の財務担当者が銀行のUキーを持っていないため、給与送金作業ができません
A:従業者と直接交渉し、4月の給与は操業再開時に支払い、4月中に支払われないことを同意した場合、4月の支払いを延期することは可能です。5月も同様です。
「会社の財務担当者が銀行のUキーを持っていないため4月の賃金を支払えない」は、客観的な理由と認められます。但し、争議を回避するため、企業は当該理由により4月の賃金が送金できない場合、従業員に遅延送金の理由(会社の財務担当者が銀行のUキーを持っていないこと)を説明し、且つ従業員が遅延送金に同意した証拠を残しておくことが望ましいです。

Q: 労働者が医療機関に隔離されている期間や医学観察期間の賃金はどの程度支給すればよいですか?
A: 本来は、病気休暇扱いになり、各地方の定める基準や就業規則の定める基準に従って賃金を支払えばよいですが、今回の新型コロナウイルスに関連して労働者が隔離されている期間や医学観察期間は本来の契約で定めた賃金を支払わないとなりません。

Q:3月、4月の社会保険の支払いについて教えてください。
A:今回のロックダウンの影響で2022年2月度~4月度の社会保険(納付期限が3月~5月)が正常に納付できない場合は、6月30日まで期限を延長しています。6月末までに納付すれば罰金、滞納金は発生しません。

 今回は主に従業員の処遇(給与)に関する説明とさせていただきましたが、その他上海市ロックダウンに関する質問・ご相談がありましたら、お気軽に福島県中国ビジネスサポートデスクにお問合わせください。

2022年5月  福島県中国ビジネスサポートデスク