中国の大学生就職事情

  • 投稿日:2006.02.20
    • 駐在員レポート

中国国家発展・改革委員会の発表によれば、中国で2006年に就職を希望する人(求職者)は2,500万人、求人総数は1,100万人で、有効求人倍率(ここでは単純に求職者÷求人数)は0.44倍、1,400万人が職につけない可能性もあり、特に大学生の就職問題は深刻な状況で「就職超氷河期」との調査結果も公表されている。日本では今年の新規学卒の求人倍率は1.89倍とバブル期並みの売り手市場との報道があるが、中国では全く逆の現象が起こっているという。

調査結果

大学生の就職に関して、北京大学公共政策研究所と中国共産主義青年団(共青団)が共同で、今年7月卒業の大学生(本科生)約6,000人を対象にアンケート調査を実施した結果は次のとおりであった。

「就職先が決まっているもしくは内定をもらっている」と回答した人は49.8%、「就職先が決まっていない」は27.3%、「すぐに就職したくない」が15%。

「すぐに就職したくない」と回答した学生をどのように捉えるかに議論はあるが、約半数が具体的な就職先がない状態であることがわかった。

就職率には、地域間格差もあり、やはり経済発展が著しい東部地域は62.4%と高く、西部地区は41.7%、東北地区は43.4%と低くなっている。

また、専門別では、農業関連学部が78.4%、工学部55.4%と高く、法学部や教育学部はそれぞれ37.9%、33%と低い状況である。

希望する初任給については、厳しい就職戦線を考慮してか1,000元から2,000元としている学生が66.1%に達しているという。

急増する大卒者数

このように厳しい状況となっている背景には、大学生の急激な増加が大きく影響しているようだ。

政府の発表によると、今年の大学卒業者は400万人を超え、97年には82万人だったものが約5倍に増加している。また、18歳から21 歳の人口に占める大学在学者の割合を見ても97年は約5%であったものが、2004年には20%と4倍となっている。

かつては、大学を卒業した後は、概ね高級人材として就職することができたが、現在ではその数も増え、特別な存在とはいえない状況となっていることが伺える。

(下記表参照)

外資系では人材不足

大卒の人材が余っているとはいえ、上海に進出している日系企業からは高級人材(大卒レベル以上)が不足しているとの声も聞かれる。

主に外資企業へ人材を派遣している人材派遣会社の話によると、日本語に限らず、外国語ができる人材は上海では不足気味で、外資系企業は採用に苦労しているという。

企業によっては、よりよい学生をいち早く獲得するために、就職活動が本格化する12月頃から大学側に依頼して優秀な人材を一定数確保するし、4年生の下期(中国では9月~1月が上期、2月から6月が下期)に企業研修として勤務させ、7月卒業後そのまま正式採用する形式で優秀な学生を囲い込んでいる。

やはり、有名大学卒の学生や技術を有する学生(農業、工業、IT、外国語など)の獲得は熾烈であり、これらの人材は、初任給も2,500元から3,000元程度が相場であり、3,000元、4000元を超える場合もあるという。

 

上記アンケート調査の結果では、約半数の大学生の就職がきまっていない結果になってはいるが、これは、今回のアンケート対象大学が、どちらかというと地方(内陸、東北など)の大学が多く、都市部の有名大学はごく一部しか含まれていないこともその結果に影響していると考えられ、必ずしも、優秀な大学生の多くが就職できない状況だったり、新卒の給与水準が1,000元 台まで低下しているとは言えないと思われる。

しかし、中国においても、「大卒」の人材が一般化し、大卒ということだけでは、容易に就職できない状況であり、採用する企業側にとっても、急増したこれらの大学生の中から、いち早く優秀な学生を確保することは、以前にもまして困難になっていることは事実のようである。

大学在学・卒業者数

(単位:万人)
1997年 2002年 2003年 2004年 2005年
卒業者数 82.9 133.7 187.7 239.1 306.8
在学者数 317.4 903.3/td>

1,108.5 1,333.4 1,561.7

*大学は本科、専科の合計

18歳から21歳の人口に占める大学在学者の割合

1997年 2002年 2003年 2004年 2005年
割 合 4.8% 11.1% 13.8% 17.0% 20.3%

出展:

  • 中国統計年鑑
  • 中国人口統計年鑑
  • NNA
  • 新華ネット
  • フジサンケイネット
2006年2月20日
福島県上海事務所 安達 和久
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