中国における自動車販売の情況

  • 投稿日:2005.05.23
    • 駐在員レポート

先日上海で開催された第11回上海国際汽車工業展覧会(上海モーターショー)は、国内外の1,036社が出展し、来場者数は過去最高の39万人の記録し、盛会のうちに終了した。

日本メーカーもトヨタ、日産、本田等各社が出展、反日デモの影響が懸念されたが、日本メーカーのブースには多くの見学者が集まっていた。

この展示会を視察して改めて、上海における自動車人気と今後の市場としての上海の可能性を感じた。

中国の自動車市場は2005年に入って回復の兆しが見られる。

全国自動車市場情報連合会の発表では、4月の全国の自動車の販売台数が285,360台に達し、去年同期に比べて15.7%増、先月に比べて7.2%増で販売台数では過去最高を更新した。これは自動車の値下げ競争が一段落したことにより、これまで市場の動向を見ていた消費者にそろそろ購入しようとする意識が出てきたことから、特に3月、4月の販売台数が著しく伸びを示したからと考えられる。

中国では、どのような車が好まれ、普及率はどれくらいなのか各種調査から拾ってみた。

最近アメリカの調査会社が中国の主要都市(北京、上海、広州)の市民3,000人を対象したマイカー購入についての電話調査結果によると「購入したいブランド」は、やはりBMW、アウディ、本田、トヨタ、GM等ヨーロッパ、日本、アメリカのブランドが人気のようであるが、最近は価格等の面や機能性から韓国車の人気が高まっているという。国産のVWサンタナの人気はいまひとつのようだ。

次にどのような価格の車が売れているのだろうか。

中国証券報によれば、よく売れている価格帯は10万元~20万元(1元≒12.5元)で、韓国現代の「エラントラ」、GMの「ビュイック」、マツダの「ファミリア」等の「中クラス」車で、排気量1.3~2.0リッターくらいの車両の販売が好調のようだ。

上海市内ディーラーからの聞き取りによると、「概ね上海の車の価格は、大衆車(VW・SATNA、VW・JETTA、CITROEN等)5万元~10万元、中クラス車(VW・SATNA2000、PASATT、GM・BUICK等)10万元~30万元、高級車(ベンツ、AUDI、BMW等)30万元以上に区分され、よく売れているのはやはり、「中クラス」車で10万元~20万元前後」とのことである。

上海モーターショーの会場では、日産のTEANA34万9,000元、サニーが16万6,000元の表示がされており、日本のメーカーは平均よりややランクの高い車種を中心に販売する戦略で上海市場を狙っていることが伺える。

中国の自動車の保有率はどれくらいだろうか。

先ほどのアメリカの調査会社の調査によると乗用車の保有率は、北京22%、上海8%、14%と北京が一番高い比率となっている。

上海は3都市では一番低くなっているが、2003年の「上海城鎮居民基本情況調査」によれば、上海の車保有率は100世帯で5.3台であり、調査の方法等が違うため単純に比較はできないが、年々保有率が高くなっていることは間違いないようである。

それでは、これら車はどのような人が買っているのだろうか。

「富裕層」と呼ばれる層はもちろんのこと、最近は新たな購入層も出現していると考えられる。

野村総合研究所の調査によると、最近は所得水準の向上、不動産市場の成長等により、消費市場に変化が起きており、中国の都市部には次世代消費層「ネクストリッチ」という層が出現しているという。彼らは、家を持ち、車を持つことを希望し、旺盛な消費欲を有し、高付加価値の耐久消費財を求め、自分なりのライフスタイルと追求する傾向にあるという。

年収で区分すれば、従来の「富裕層」が年収10万元以上であるのに対して、「ネクストリッチ」は年収が5万元~10万元くらいの層をいい、沿海部のみならず、中国全土の地方都市等にも点在し、その数は5,000万人くらいと想定されるという。

しかもこの層は4、5年後には購買力をより高め「富裕層」となる可能性が非常に高という。

今後は、この「ネクストリッチ」が、自動車や海外ブランド商品などの高付加価値消費財の購入者となり、新たな消費市場、消費の形態を形成してゆくと考えられることから、彼らを対象として商品開発、販売戦略が重要となってくると考えられる。

資料出展

  • 2005 5月18日 新民晩報
  • 2005 5月14日 中国証券報
  • 2005 5月10日、5月25日 NNA上海
  • 2004上海城鎮居民基本情況調査
  • 2005上海日本商工クラブ「特集、ネクストリッチの構造とマーケット」
  • 2005 5月上期号 ジェトロ上海「ジェトロニュースレター」

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