中国進出にあたっての商標登録のすすめ

  • 投稿日:2006.08.29
    • 駐在員レポート

最近の日本企業の中国進出を見ていると、中国を新たな市場として捉え、販売先を求めて進出してくる企業が増えているように思える。しかし、中国市場には、日本市場にはないリスクもあり、脇をしっかり固めていないと思わぬところで足もとをすくわれることになりかねない。

さて、「自社製品を中国に輸出して販売してみようか」と思ったら、展示会に出展するだけでもやっておいたほうがよいのは「商標登録」である。中国にサンプルを出し、市場調査である程度売れる見込みがあると分かると、中国の会社や個人がその情報を嗅ぎ付け、先に商標登録をされてしまうということが往々にして見られるからである。

今回は、中国における商標登録をめぐる話題、中国の商標制度、商標取得の手続きについて簡単に紹介したい。

商標をめぐる話題

ケース1 商標は金を生む鶏?「ジダンの頭突き」

今年ドイツで行なわれたサッカーのワールドカップの決勝で、フランスのジダン選手がイタリアのマテラッツィ選手に頭突きをした場面をモチーフにしたデザインを中国人ビジネスマンが商標登録をした(図1参照)。商標登録した商品区分は、「服装、靴、帽子」、「ビール」の2区分で商標取得の申請にかかった経費は2000元(日本円で約3万円)。その後、彼はこれをインターネット上で売りに出しているが、売値は100万元(日本円で1500万円)という高値。それにも関わらず、報道によると、ビールの商標については中国国内メーカーと具体的な商談を進めているというから驚きもひとしおだ。

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(図1 ジダンの頭突き商標)

ケース2 一度取られた商標を取り返すのは至難の業?「無印良品」

2005年7月に日本の「無印良品」の中国1号店が上海市の繁華街に開店した。しかし、香港の企業が先に「無印良品」、「MUJI」のブランドで「服装、靴、帽子」の商標を取ってしまっていたことから、中国の店舗で衣料品などを販売することができなかった。この香港企業は95年に先行出願。一方日本の「無印良品」は99年に出願したが、香港企業による先行出願の事実が判明。仕方なく、2000年5月に中国国家工商行政管理総局商標評審委員会に対し香港企業の商標無効取り消しを求めることとなった。幸いにも2005年11月に「無印良品」の日本での知名度が考慮され著名商標扱いされたことから、日本の「無印良品」の主張が認められ、香港企業の商標登録取消を命じる審決が下されたが、衣料品の販売が始まるのは2006年秋の見込み。商標は取り返せたものの、商標を取っていなかったために中国大陸進出や自社製品の販売に大幅な遅れが生じた事例である。

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(写真 上海の無印良品1号店)

中国の商標制度の概要

中国の商標制度は、日本同様に早い者勝ちの先願主義の原則をとっている。有効期間は10年間で、その後10年おきに更新することができ、更新を続ければ半永久的に使用できる。一般に、商標登録をする場合は、34の商品分類及び11つのサービス分類の中から申請者が必要と思う区分について登録を行なう。(例えば、「福の島」という日本酒の商標を登録するのであれば、日本酒、清酒などを含む第33類で登録することになる。)中国で商標を管轄する政府機関は国家工商行政管理総局商標局であるため、申請の窓口はここになるが、外国人または外国企業が中国で商標を出願する場合、国が認可した商標代理資格を有する組織を通して申請することになる。現状では、商標を申請してから登録が完了するまでに1年半の時間がかかるようである。ただし、商標は使用を前提に保護をされるので、登録しても3年間不使用の場合は取り消される。

商標権の範囲は、類似商標、類似商品に及び、商標を侵害した場合は、使用の差止、損害賠償とともに懲役、罰金刑が科せられる。

中国で商標登録する場合の手続きについて

中国で商標登録する場合の手続きと費用について簡単に紹介したい。

商標は先願主義のため、登録する前に、他者がすでに登録しているか否か事前調査をしたほうがよい。2005年12月より商標局のホームページ「中国商標網」(http://sbj.saic.gov.cn/index.asp)上でも商標データベースが公開されるようになり、登録されているものと出願中のものについて中国語または英語で検索できるようになった(無料)。また、代理業者を通じての調査も可能であり、日本語対応の業者もある。

さて、次に、先願商標がないことを確認できたら、いよいよ商標登録の手続きとなる。例えば、福島の企業が商標登録を行なう場合は、外国企業なので代理業者を通じて申請することとなる。業者へ提出する書類は、代理業者への委任状、商標見本、出願人・企業の名称と住所(漢字及び英語表記)など、ちなみに商標局への申請書類等については、代理業者が作成してくれる。

費用は、商標登録(10年間の登録料を含む)として商標局へ支払う法定費用は、1商標1分類で1000元(日本円で約1.5万円)。これに、指定業者への代理手数料が加算される。ちなみに、ある日本語対応の業者の場合、事前調査の費用が1商標1分類につき2万円、商標登録の費用が1商標1区分で5.5万円となっているので、代理業者に事前調査から商標登録を委託する場合、費用の目安としては1商標1区分で9万円程度となる。

福島県では、中国でも県産品の販路拡大を図るために、2006年9月に県産品のショールームとして「福島ギャラリー」を開設し、すでに進出をしている、あるいは進出を希望している企業の商品を展示するとともに、専属の販売スタッフを配置しセールスを行なう。

今後、ますます多くの県内企業が中国市場を求めて進出することと思われるが、今回の商標の話を頭の片隅においていただければ幸いである。

出典:

  • 中華人民共和国商標法
  • 中国商標網
  • 日本貿易振興機構北京センターホームページ
  • サーチナ中国情報局、東方ネット(2006年8月1日)
  • 北京日報(2006年8月3日)
  • 時事通信(2005年12月12日)
2006年8月30日
福島県上海事務所 大島 康範
(この記事は、「グローバルふくしま」No.108(2006年10・11月号)に寄稿したものです。)
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