駐在員雑感(第38回)「日本天価米」

  • 投稿日:2007.08.28
    • 002:職員コラム

先月4年ぶりに北京市と上海市で日本米の販売が行なわれたことは、マスコミでも大きく取り上げられました。合計24トン、輸入された銘柄は、新潟県産コシヒカリと宮城県産ひとめぼれ。2キロ入りの袋に入っており、新潟県産コシヒカリが1袋  199元(3,184円 1元≒16円で計算)、宮城県産ひとめぼれが189元(3,024円)と中国米と比較して超高級品です。ちなみに、中国米は安い物で1キロ2元程度から少々高級品でも10元から15元程度ですので、40倍から50倍の価格差です。

そのため中国では、この米は「日本天価米」(天にも届くほど価格の高い超高級な米という意味)という呼び名で報道されております。

価格に対しては非常にシビアな中国人と思っておりましたが、この「天価米」は、北京では約20日で完売となり、上海はまだ少々残っているようですが、関係者の話によれば、9月中には完売する見込みということで、売れ行きは好調のようです。

 

さて、今回輸入された日本米は、価格が非常に高いせいか、当地でも話題となっており、関係する面白い新聞記事をいつくか見つけることが出来ましたので紹介したいと思います。

まず、先日上海では、「中国国産米」VS「日本天価米」の食べ比べイベントが開催されたそうです。

中国米の代表は、現地では中高級米と位置づけられている「瀛豊五斗有機米」「錦菜園有機米」「秋田小町(中国産)」の3種類。価格はどれも1キロ13元から14元程度ですべて中国産です。

日本米の代表は「新潟県産コシヒカリ」。1キロ99元です。もちろん日本産。

約400人のアンケート結果は、「食べておいしいと感じたのは?」という質問には、「瀛豊五斗」と答えた人が67%、新潟県産コシヒカリ19.8%、「錦菜園有機米」7%、「秋田小町(中国産)」6.2%でした。

「買いたい米は?」という質問には、「瀛豊五斗」が82.8%、「錦菜園有機米」7.3%、「秋田小町(中国産)」6.7%、新潟県産コシヒカリ3.2%でした。

このイベントに参加した上海飲食業協会の専門家の話では、「新潟県産コシヒカリは、米の形がよく、つやがあり、米に弾力性がある点が優れている。すしやカレーなどの日本料理に適している。」一方中国の瀛豊五斗は、「炊いている時に独特のいい香りがし、米の粘りが強い。米の品質、価格から勘案してもやはり瀛豊五斗が優れている。」とのコメントでした。やはり軍配は、中国米に上がったようです。

次に、河南省の原陽県では、「日本のコシヒカリよりも原陽県の米の方が上である。」と県政府関係者が語ったという記事です。なんでもこの原陽県では、10年前に日本のコシヒカリを植えたそうですが、関係者いわく、「病気でよく育たず、十分な収量が得なれなかった。そんなコシヒカリより、現地の「黄金晴」の方が、管理が容易であるうえに、品質もよくしかも1キロ4元と安い。現地産の「黄金晴」は日本産の米に勝るとも劣らない。」という主張でした。

 

どちらの記事も、中国米のほうが日本米よりも優れているということを主張したいという気持ちはよくわかります。そこで、私も中国の人気米「瀛豊五斗」を買って食べてみました。しかし、案の定、我が家では評判がよくありませんでした。粘りがなく、炊き上がりのにおいも日本人には不慣れなにおいでした。わが家では、やはり日本の米がおいしいと感じるようです。

要するに、中国人と日本人の味覚の差、普段食べ慣れている味かどうかによって、選択する米が違うという単純な結論なのかなあと思ってしまいました。

それから、もう一点気になったことは、上記中国の米について、よくよく調べてみると、そもそも米の品種改良を行っているのは、どの種類も中国ではないような気がします。

まず、「瀛豊五斗」ですが、これは上海市の崇明島で栽培されておりますが、台湾の企業が品種改良し、崇明島で栽培しているようです。また、「錦菜園有機米」は日本の企業が日本の「みつひかり」という品種を中国で栽培し、「あきたこまち」はもちろん日本の品種で、それを吉林省で栽培されているものです。河南省の「黄金晴」も元をたどれば、日本の品種ではないでしょうか。言ってしまえば、すべて日本や外国で品種改良されたもの同士の比較であり、中国が独自に開発した品種の米ではないということです。

中国で国産と思われているものの中には、歌やマンガなども含めて、元は外国であるにもかかわらず、中国産と思い込んでいるものが意外と多くあるように思います。(日本も同じかもしれませんが?)

  

10年前、上海に駐在していた時、中国産の米が非常にまずかったのを今でも鮮明に覚えています。炊き上がりには、なんともいえないにおい(少々臭い)がし、米には時折石が混ざっていました。

あの頃と比べれば、確実に中国の米はおいしくなっています。

工業製品のみならず、米などの一次産品の分野でも中国は、外資の技術を導入???して進化していることを改めて実感しました。

 

2007年8月26日
福島県上海事務所 安達和久
-->