中国の社会保険について

  • 投稿日:2022.04.26
    • 009:ビジネスニュース

 今月から、毎月中国においてビジネスを行う上で知っておきたい法律や制度その他お役立ち情報をご提供することになりました。
 第一回目は社会保険。特に上海では、地域ルールで昨年まで外国人の加入が義務ではなかったため、いろいろ疑問もあるかと思われますので、ぜひ今回の記事で改めて制度の確認をしてみてください。

■初めに
 中国では2011年より中国国内にいる外国人労働者に対して中国の社会保険に加入義務化が始まりました。しかし、中国では中央政府ルールより地方政府ルールの方が強いことを理由に、上海市では2021年8月15日迄は実務上「義務化」が見送られていました。
 現在(2022年4月22日)までにおいて、上海市からは「強制加入」に関わる細則は発表されていませんが、「加入が可能」という通知が廃止されたことにより、一般的には上海市の外国籍者についても中国社会保険の加入手続を進める必要があると理解されています。
※未だ中国の一部地域(大連市、東莞市等)では、外国籍者が社会保険に加入していないケースはあります。

■外国籍者の取扱い(上海市の場合)
 ▶ビジネスデスク調べでは全体の2割弱の日系企業が加入
  ⇒他の6割の企業は様子見、残りは加入準備中。 (2021年11月時点)
 ▶代表処(駐在員事務所)の駐在者はの加入は受付けていない (2022年4月現在)
  ⇒社会保険局システム上、代表処の首席代表や外国籍駐在員の加入に対応できていない。
 ▶未加入の場合
  ⇒追加規定は出ていないが、社会保険局の調査もしくは、社会保険加入時に罰金・延滞金を要求される可能性はある。
  ※現行、自主的に加入する場合、遡及納付が発生しても罰金や延滞金は発生していない。      

■社会保険の内容

保険名内容
養老保険累計15年以上納付することで、一定金額の養老金を毎月受領できる。定年退職後に支給。別途個人負担あり。
医療保険中国の地場の病院での医療費(診察代、処方薬代等)の負担。個人負担あり。
工傷保険労災に関わる医療費の負担、補償金等の支給。中国国内で労働災害が発生した際に使用。
生育保険出産に関わる医療費の負担、産休手当等の支給。
失業保険失業期間中における生活費および医療費等の支給。個人負担あり。

■社会保険額の計算方法(上海市の場合)
【加入する場合の2022年4月時点社会保険(5険)の料率(外国籍者は住宅積立金加入不要)】
 ▶医療保険(会社負担9.5%、個人負担2%)
 ▶養老保険(会社負担16%、個人負担8%)
 ※日本から派遣される駐在員は、「中華人民共和国で就労する被用者のための日本国公的年金の適用に関する証明書(以下、適用証明書)」の提出により、養老保険加入は免除されます。
 ▶失業保険(会社負担0.5%、個人負担0.5%)
 ▶工傷保険(会社負担0.16%~1.52%、個人負担無し)
 ※工傷保険の料率は業種により異なります。
 ▶生育保険(会社負担1%、個人負担無し)
 なお、日中社会保障協定の適用(日本で公的年金を納めておられる方の中国養老保険の加入免除)申請を行われる際には、日本年金機構において発行される「中華人民共和国で就労する被用者のための日本国公的年金の適用に関する証明書(以下、適用証明書)」が必要となります。

適用証明書の日本側手続概要
・適用証明書申請書

https://www.nenkin.go.jp/service/shaho-kyotei/shikumi/shinseisho/china/china.html

・既に赴任されておられる駐在員の方は「7」を合わせてご確認下さい。

https://www.nenkin.go.jp/service/shaho-kyotei/kunibetsu/notice/china.html#cms08

また、日本から派遣される駐在員の場合、基数の上限額(税込月次給与31,014元)を上回る可能性も高いと考えられますが、基数上限額に基づく、中国社会保険料の概算は下記の通りです(工傷保険は0.16%で試算)。

【中国社会保険料の概算】
・適用証明書を提出しない場合の「社会保険料(養老保険を含む)」
 会社負担8,423.70元/名/月 個人負担3,256.60元/名/月
・適用証明書を提出した場合の「社会保険料(養老保険を含まない)」
 会社負担3,461.40元/名/月 個人負担775.40元/名/月

 社会保険基数を人民元給与のみとするのか、外貨給与も含めるのか等について確定はしておりませんが、現在、社会保険料は税務局への納付となっているため、月次申告額である「月次税込給与(人民元給与+外貨給与+会社負担個人所得税)」での試算が必要と考えられます。

 個人負担分社会保険料について、社会保険料控除は「専項控除(専項付加控除ではありません)」として「居民個人」のみ適用できるため、暦年で「満24時間となる中国滞在日が183日未満」となる方については、社会保険料控除が適用できず、当該部分が課税対象となり、個人所得税が増加します。

■社会保険の納付手続き

■よくある質問
Q1.遡り納付は要求されるか。
 ⇒A.資料を提出後に社会保険センターが資料に基づき個別判断される。
Q2.帰任となり、完全帰国する場合、納付した保険料は還付できるか。
 ⇒A.個人負担分の養老保険、医療保険について、個人口座に入っている金額は、社会保険センターに申請すると還付される。
Q3.医療保険について、上海市で納付しているが、上海市以外でも使用できるか。
 ⇒A.使用できるが、外地の病院にて医療費が発生した場合、発票など必要資料をそろえ、管轄の社会保険局にて保険適用申請するなど、事後処理が必要となる。
Q4.納付しないとどのようなリスクがありそうか。
 ⇒A.保険料納付に加えて罰金・延滞金を言われる可能性がある。
Q5. 一般的には個人負担も会社負担にするのか。
 ⇒A.会社ごとに判断になる。手取り保証をしている出向者については一般的には個人負担部分も会社負担として給与を増加させる場合は多いかと思われる。その場合は、脱退一時金は会社に戻すことを書面で約する場合が多いと思われる。

■最後に
 中国では地域ごとに取り扱いが異なる場合もありますので 実務上の問題については専門家にご相談されるようお勧めいたします。
 本内容にご不明点等ございましたら、お気軽に福島県中国ビジネスサポートデスクにお問合わせください。

2022年4月  福島県中国ビジネスサポートデスク