全世界所得課税について

  • 投稿日:2024.08.14
    • 009:ビジネスニュース
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2019 年施行の改正「個人所得税法」関連規定である【中国国内に住所を有さない個人の居住期間判定基準に関する公告(財政部 税務総局公告2019 年第34 号)】により、早い方で2025年度から中国国外所得に対する中国における個人所得税課税(全世界所得課税)が開始されます。

2019年前から赴任されている駐在員及び現地採用の外国籍者で対象となる可能性がある方がおられる企業では、累計滞在年数についての再確認の実施および全世界所得課税対応についてご検討ください。(「中国国内に住所を有さない個人」とは、戸籍や家庭、経済的利益関係により習慣的に中国国内に居住しない個人となり、基本的には外国籍者を指します)。

1.関連規定(財政部 税務総局公告2019 年第34 号)の主な内容と解説

【中国国内に住所を有さない個人の居住期間判定基準に関する公告】

・全世界所得課税となる満6 年(一納税年度・暦年において、中国国内累計滞在が満183 日以上、

かつ連続30 日超の出国がない年が連続6 年)の起算は、2019 年から開始する(2018 年以前の年度は計算に含めない)。

・中国国内の累計滞在日数は、中国における1 日の滞在が満24 時間となる場合に加算し、1 日の滞在が24 時間未満である場合、滞在日数に含めない。

解説①:満6 年後の7 年目から全世界所得課税となるため、早い方で2025 年から全世界所得課

税開始となりますが、連続30 日超の出国がある場合、累計滞在年数のカウントは翌年より再計算されます。なお、7 年目(2025 年)に連続30 日超の出国をした場合において、全世界所得課税でなくなるのは翌年(2026 年)からであるため、2019 年から現在までにおいて、全ての年度が中国国内累計滞在183 日以上である方が、全世界所得課税を回避するには、満6 年の前(つまり2024 年中)に連続30 日超の出国をする必要があります。

解説②:連続30 日超とは、30 日を超過することであり、「31 日以上」を指します。なお、出入国日を国外滞在として取り扱うかについて、当該公告では明確に規定されていないため、実務対応における日数カウントは、出国日翌日を「国外滞在日の起算日」とし、「入国日前日までを満了日」とする運用が望ましいです(出入国日は国外滞在日数に含めない)。

2. 累計滞在年数のカウント例

ケース① 2025 年から全世界所得課税の対象となるケース

赴任前の中国出張 :2019 年5 月20 日(中国入国)-2019 年5 月25 日(中国出国)

赴任日 :2019 年7 月1 日(中国入国)

年末年始一時帰国 :2019 年12 月31 日-2020 年1 月5 日

中国滞在満183 日年度 :2019 年-2023 年(2024 年も満183 日予定)

→赴任後における満24 時間中国国内滞在は7 月2 日から12 月30 日の合計182 日ですが、赴任前の中国出張における満24 時間中国国内滞在4 日間(5 月21 日-5 月24 日)を加算し、2019年中国国内滞在日数は満183 日となります。そのため、全世界所得課税の年数カウントも2019年から開始し、2024 年で連続6 年、2024 年までに30 日超の国外滞在がなければ、2025 年から全世界所得課税が開始します。

ケース② 2025 年から全世界所得課税の対象とならないケース

赴任日 :2019 年4 月1 日(中国入国)

日本への一時帰国 :2020 年1 月23 日(中国出国)-2020 年3 月2 日(中国入国)

※新型コロナを原因とする一時帰国

中国滞在満183 日年度 :2019 年-2023 年(2024 年も満183 日予定)

→2020 年の一時帰国は30 日超の国外滞在に該当するため、全世界所得課税の累計滞在年数カウントは2021 年から開始し、2024 年で連続4 年、2026 年までに30 日超国外滞在がなければ、2027 年から全世界所得課税が開始します。

3.中国国外所得の例と検討事項

日本本社支給・負担の退職金:

退職金全額(全期間)に対して支給月の総合所得(給与)として課税(全世界所得課税でない場合、中国国内勤務期間分のみ課税)。

配当金所得、資産賃借料所得、資産譲渡所得など:分離課税

検討事項:中国現地法人等の駐在員個人が日本で保有する不動産の賃借収入や株式の配当金等は、日本非居住者として日本でも源泉徴収課税され、中国側で外国税額控除を受けることとなります(各税務局への確認でも必要資料等は確定しておらず、外国税額控除適用の実務上のハードルは高いと考えられます)。なお、駐在員給与に対する個人所得税は、多くのケースで会社負担となっていますが、全世界所得課税対象となる方については、中国国外所得の有無や追加税額発生時の負担者について、社内規定などにより取扱い方法を定め、また必要に応じて、30 日超(31 日以上)の国外滞在によるカウントのリセットも検討する必要があります。

4. その他(CRS について)

「非居住者に係る金融口座情報の自動交換のための報告制度(CRS)」により、2018 年9 月以降、日中税務当局間において情報交換が実施され、既に日本側においては、相続税申告時における中国ローカル銀行個人口座残高の申告漏れが税務当局から指摘されるケースが散見されています。

全世界所得課税の対象となる方の中国国外所得については、慎重な取扱いをお願いいたします。

中国でのビジネスでお困りのことがありましたら、お気軽に福島県中国ビジネスサポートデスクまでご相談ください。

2024年8月14日  福島県中国ビジネスサポートデスク

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