日系企業中国現地社員の給与動向について
- 投稿日:2007.03.28
- 駐在員レポート
(株)エヌ・エヌ・エー社では、毎年「日系企業中国現地社員給与動向調査」を実施しているが、その結果が発表されたので、今回は主にそのデータを基に、2007年の中国の日系企業現地職員の給与動向について紹介したい。
月額給与
日系企業に勤務する中国人社員の2007年の平均月額給与(2006年11月調査)は、「事務系一般スタッフ」が2,142元(1元≒16円)、「生産技術系一般(エンジニア)」が3,065元、「生産一般工員」が975元という結果になった。
さらに詳細の職位別で比較すると、「高級管理職(総経理、支店長クラス)」の平均月額給与は、21,572元、「営業一般職」は、3,666元、「秘書」は、3,972元となった。
ここで言う秘書とは、単なる秘書ではなく、総経理など幹部職員の通訳兼対外交渉担当という重要な役割を担っている場合が多いため、高い給与になっている。
一方、技術系の詳細職位別では、「技術系(工場長クラス)」が7,060元で、「システムエンジニア」は3,390元、IT方面での開発プロジェクトの責任者「プロジェクトマネージャー」は5,407元となっており、やはり技術系の給与水準が高いことが伺える。
次に、地域別では、最も高い水準にあるのは上海、江蘇省、浙江省などの華東地域で、上海市の「事務系一般スタッフ」の平均は、2,980元、「生産技術系一般(エンジニア)」が5,090元、「生産一般工員」が1,455元となっている。いずれも中国の他の地域と比べて、最も高い水準となっている。
しかし、高級管理職については、もっとも高水準なのは、上海ではなく、広州市で39,667元、江蘇省が32,200元、次いで上海市の27,060元となっている。
これは、広州市に、日系の自動車系工場が多く進出しており、その工場を管理する中国人の責任者が多く存在しているためで、また、江蘇省についても、上海市から、江蘇省周辺に製造拠点が移り、そこで働く中国人管理者が多く存在するため給与水準が高くなったと考えられる。
また、業種別では、「事務系一般スタッフ」では、金融・保険・証券が最も高く3,415元、ついで運輸・倉庫3,264元、「生産技術系一般(エンジニア)」では、情報通信が5,136元、機械が5,001元となっている。
昇給
2006年度は、全体の83.9%の企業が昇給を実施しており、2007年は、79.8%が昇給を行うとしている。昇給率は、「事務系一般スタッフ」、「生産技術系一般(エンジニア)」ともに、8.9%、「生産一般工員」は8.6%となっている。
地域別では「事務系一般スタッフ」では、浙江省が最も高い10.9%、「生産技術系一般(エンジニア)」では、上海市の10.8%が最も高い。
事務系、技術系ともに長江デルタ地域での伸び率が高いことが伺えるが、「生産一般工員」で比較すると、広東省が9.6%ともっとも高く、珠江デルタが、華東デルタを上回っている。
これはやはり、広東省に集積する日系自動車関係企業の影響であると考えられる。
業種別では、「事務系一般スタッフ」で比較すると、金融・保険・証券が11.5%と最も高く、次いで貿易商社10%。また、「生産技術系一般(エンジニア)」で比較すると、情報通信が12.4%、機械が10.7%となっている。「生産一般工員」では、自動車関連が9.5%と最も高く、次いで半導体9.4%となっている。
新卒
最後に、新卒の給与動向について紹介したい。
2006年7月に卒業した4年制大学の卒業生の月額給与の平均は1,949元で、地域別で見ると、北京市が2,593元で最も高く、次いで上海市が2,588元、広州市2,412元となっており、日系企業の多い地域での初任給が高い水準となっている。業種別では、金融・保険・証券が2,817元で最も高く、次いで貿易商社が2,680元となっている。
中国では2000年以降、大学の定員を大幅に増やしてきた。そのため、卒業する学生の数も年々増加傾向にあり、2007年7月大学卒業を予定し、就職を希望する学生は約500万人といわれている。政府教育部の発表によれば、通常大学生の就職率は約70%程度とのことであり、昨年からの就職浪人などを考慮しない場合、今年は、約150万人が就職できないことになる。
これを反映してか、初任給が2,000元に届かない地域も多くなっている。日本とは逆に、中国での大学生の就職は年々厳しくなっているようである。
職位別・地域別月額給与
区分 | 高級管理職 | 営業 一般 スタッフ |
事務系 一般 スタッフ |
生産技術 工場長 クラス |
生産技術 一般 (エンジニア) |
一般工員 (ワーカー) |
|
全体平均 | 21,572 | 3,666 | 2,142 | 7,060 | 3,065 | 975 | |
北京市 | 11,450 | 4,363 | 2,656 | 4,417 | 2,697 | 1,064 | |
上海市 | 27,060 | 4,769 | 2,980 | 7,598 | 5,090 | 1,455 | |
江蘇省 | 32,200 | 2,476 | 1,858 | 8,806 | 2,777 | 919 | |
浙江省 | 20,000 | 2,167 | 1,886 | 6,042 | 2,376 | 973 | |
遼寧省 | 11,450 | 1,571 | 1,639 | 5,884 | 1,911 | 782 | |
広州市 | 39,667 | 3,721 | 2,412 | 17,733 | 2,982 | 949 | |
広東省その他 | 13,125 | 1,154 | 1,453 | 4,699 | 2,065 | 824 |
地域別昇給の有無・昇給率
区 分 | 2006年度昇給を実施した企業の割合 | 2007年度の職位別昇給率の見込み | ||||
高級管理職 | 事務系一般 スタッフ |
生産技術一般 (エンジニア) |
一般工員 (ワーカー) |
|||
全体平均 | 83.9 | 8.5 | 8.3 | 9.4 | 8.9 | 8.0 |
北京市 | 91.3 | 8.8 | 7.5 | 6.0 | 6.0 | 6.7 |
上海市 | 80.1 | 9.0 | 8.3 | 10.0 | 9.9 | 8.1 |
江蘇省 | 85.2 | 6.4 | 8.1 | 8.3 | 8.4 | 7.5 |
浙江省 | 91.7 | 10.8 | 11.0 | 12.0 | 11.2 | 9.7 |
遼寧省 | 73.7 | 8.2 | 10.0 | 16.9 | 7.8 | 7.9 |
広州市 | 86.1 | 8.5 | 7.3 | 8.9 | 7.2 | 7.0 |
広東省その他 | 90.0 | 12.5 | 6.9 | 7.4 | 10.0 | 7.5 |
(出展:NNA「日系企業中国現地社員給与動向調査 2007年版)
学歴別月額初任給
区分 | 専門学校以下 | 大学院以上 | |
全体平均 | 1,480 | 1,949 | 2,625 |
北京市 | 1,947 | 2,593 | 3,350 |
上海市 | 2,027 | 2,588 | 3,383 |
江蘇省 | 1,374 | 1,602 | 2,250 |
浙江省 | 1,385 | 1,774 | 2,400 |
遼寧省 | 1,089 | 1,571 | 1,671 |
広州市 | 1,743 | 2,412 | 2,964 |
広東省その他 | 1,166 | 1,454 | 2,200 |
*NNA「日系企業中国現地社員給与動向調査 2007年版」の概要
- 中国(香港、マカオ、台湾を除く)に進出している日系企業461社のデータ
- 月額給与は税引き後の手取り給与
- 高級管理職:現地法人、事務所の最高責任者
- 事務系一般スタッフ:現地法人、事務所などにおいて総務系の業務を行うスタッフ
- 営業一般スタッフ:実際の商品の販売、販路開拓などに従事する担当者
- 生産技術工場長:製造現場での最高責任者
- 生産技術一般(エンジニア):設計、研究、開発などに従事する担当者
- 一般工員:製造現場の作業員
福島県上海事務所 安達和久