最近の上海経済事情
- 投稿日:2005.04.21
- 駐在員レポート
先日行われた中国の「住みやすい都市ランキング」調査によると、第1位は上海市でついで大連市、北京市、広州市、成都市、青島市と続く。
同調査によると、上海は「経済が先進的で、経済発展が急速で、経済力が強いこと」が第1位の原因のようである。
確かに、経済の発展では上海が中国で第一位なのは間違いない。
2004年の上海の経済状況は、GDPが7,440億元に達し、実質成長率は前年同期より1.7ポイント上昇して13.5%で13年連続して2ケタ成長となった。
貿易総額も前年対比42%増の1,600.26億ドルと過去最高を記録した。
上海港のコンテナ貨物取扱量は昨年同期29%増の1,455万TEUで、増加する貿易に対応するため、上海市は現在「洋山深水港」を建設している。(上海市の南匯区と杭州湾に浮かぶ島を全長32キロの「東海大橋」でつなぎ、その島の周辺に港を建設している。)
2005年10月頃には第一期工事完成予定で、コンテナ取扱い220万TEU で5つのコンテナバースを備え、水深が15.5Mとなる。将来的には、2,500万TEUの取扱量を目指す。
次に投資については、件数が4,334件、金額(契約ベース)が116.91億ドルで昨年より件数で0.3%、金額で5.7%増加した。また、日本企業の上海への投資は730件、15.33億ドルと投資件数こそ昨年より減少したものの依然として高い水準で推移している。
これら外資系企業の進出や駐在員数の増加に伴い、上海の平均賃金・不動産価格はいずれも上昇している。
上海市の労働者平均賃金は24,398元/年(月額2,033元)で前年比10.1%の増加で、1995年からの10年間で2.6倍の伸びとなっている。
また、2004年の上海の日系企業の平均賃金は、ホワイトカラーで平均7.3%の上昇で3,638元/月、一般工員で6.8%の上昇で1,269元/月となっている。
2004年新卒(大学の本科卒以上)の初任給は、2,150元で、上位10%の平均は5,000元に達している。
不動産の価格は、2005年オフィスの賃貸料金は、市中心部で平均1㎡1.5ドル/㎡/日、賃貸住宅の家賃は平均で3,795ドル/月となっている。賃貸住宅の家賃は、昨年と比べて平均5%程度の上昇となっているが、中には30%程度上昇している物件もある。
また、分譲住宅(マンション)は市中心地で1㎡30,000元~40,000元程度で中には、上海の外灘を望む超高級マンション(香港系の企業が浦東に建設中の物件)は1㎡80,000元というものもあるという。
市内の不動産関係の話によると「住宅・オフィスとも2003年~2004年にかけて平均で20%から30%は値上がりしている。これまでは90年代後半(98年から99年頃)に不動産価格は一度調整局面を迎えたが、2000年以降また上昇し始めている。これまでは、5年程度での周期で価格の調整局面があった。よって、今年はこの調整局面となる可能性もある。」「中央政府が、不動産への投資が過熱しているのを懸念して、各種の引き締め策(キャピタルゲイン課税の強化など)を行っている。更なる引締め策が打される可能性もある。」と引締めへの懸念を語っていた。
このように、不動産価格はバブルを指摘する声もあるものの、上海の経済発展は中国一であり、世界中の企業や投資家が注目する都市、外国人の数も増えており、暮らしやすい都市と言えるのである。
このように、高い経済成長を続ける上海ではあるが(バブル気味との声も聞かれるが、)、4月16日、他の中国の都市と同様に、大規模な反日デモが起こり、日本の領事館やその周辺の日本料理の飲食店が物的な被害を受けた。このことは、日本側のマスコミの過激な報道も手伝って、在上海の日本人社会にも少なからぬ影響を与えた。
今回の一連の反日デモは、あくまでも一部の過激な学生等による一時的行為であり、領事館周辺以外の地域においては通常どおりの経済活動や生活が行われていることを強調したい。確かに、一部観光関係部門には影響がでているが、現地旅行代理店の総経理は「これまで、SARSや津波等で何度もこの手の苦い経験はしており、今回もすぐに回復すると考えており問題ない。」と意外と冷静である。
経済が急激に発展するにつれて、社会にひずみが生じてくることは多々ある。
今の中国は、いつ何時民衆の不満が爆発し、表に出てきてもおかしくない状況にあるといえる。
しかし、中国はこれまで数多くの危機を乗り越えて世界各地から資金を集め、経済発展を遂げてきた。これまで同様、今回もピンチをチャンスに変えてたくましく前進するような気がする。
最近の上海の経済指標
2000年 | 2001年 | 2002年 | 2003年 | 2004年 | |
GDP成長率(%) | 10.8 | 10.2 | 10.9 | 11.8 | 13.5 |
輸出入総額(億ドル) | 547.10 | 608.95 | 726.64 | 1,123.97 | 1600.26 |
輸出額(億ドル) | 253.54 | 276.28 | 320.55 | 484.82 | 735.20 |
輸入額(億ドル) | 293.56 | 332.67 | 406.09 | 639.15 | 7865.06 |
日系企業投資件数(件) | 237 | 342 | 467 | 788 | 730 |
日系企業の投資額 (契約ベース)(億ドル) |
7.05 | 13.24 | 10.60 | 12.72 | 15.33 |
平均賃金(元/年間) | 15,420 | 17,764 | 19,473 | 22,160 | 24,398 |
失業率(%) | 3.5 | 4.3 | 4.8 | 4.9 | 4.5 |
出展:
- 上海市統計年鑑
- 商務周刊
- 上海市労働保障局資料
- NNA日系企業中国現地社員給与動向
- ジェトロ上海センター資料
- 天晨不動産年次報告書
福島県上海事務所 安達和久