駐在員雑感(第52回)「上海で流行の変身写真」

  • 投稿日:2009.01.05
    • 002:職員コラム

 上海で人気の変身写真とは、中国チックな衣装(チャイナドレス、民族衣装、皇帝服など)から好きな服を選んで、プロのカメラマンが撮影し、自分だけのオリジナルアルバムを作ってくれるサービスがあります。上海ではこの変身写真が観光客のみならず、地元の上海人にも広く浸透しています。

  この変身写真が登場したのは1980年代で、当時の写真は、今の変身写真とは違いますが、改革開放でウエディングドレスを着て結婚写真を撮るのがブームとなりました。写真1枚が80~100人民元、当時の月給の約半分でたいへん高価なもので、月給の3カ月分くらいかけて、5枚くらい写真を撮る人もいました。1990年代に入り台湾資本の写真館が上海に上陸し現在のような変身写真が登場し、豊富な衣装、メイクやカメラマンの技術、映画スターのように変身できるという新しいサービスが上海の若者のハートをとらえました。それまでなかった豪華なアルバム装丁も話題になりました。

 このように、日本人にはちょっと恥ずかしいような派手な衣装をまとい、モデルのようなポーズで写真を撮ることが上海人に受けた理由は、上海人の〝気質〟に起因しているようです。中国人の間でも上海人の女性は、特に〝ワガママ〟〝おしゃれ〟〝プライドが高い〟ということで有名ですが、そういったとにかく常に〝人から注目されていたい〟と言う願望で、この〝変身写真〟は上海人に支持されているようです。

 近年、上海では所得水準が高まり、特に女性の趣味やファッション、娯楽に対する消費が大きく伸びています。中国の「80後(パーリンホウ)」と呼ばれる80年以降に生まれた世代(20代)は、個性を出せるファッションに関心が高いようで、服装や化粧など韓国や日本の雑誌を参考にしながら、いろいろなファッションをしています。特に日本のファッションに対する憧れは強いようで、私の中国語の先生(20代女性)も日本に化粧品を買い行くのが今の夢だと言っています(※中国国内で日本ブランドの化粧品を購入できるが、かなり割高で商品自体も中国人向けにアレンジしてある。)し、上海のイベントにはあの〝エビちゃん〟も登場し、会場は若い中国人女性で満員になっています。この消費層にターゲットを絞り日本、欧米からは一流化粧品メーカーやファッションブランドが多数上陸しています。

 人口が減少し閉塞感が強い成熟国よりも、人口が多く経済発展目覚ましい中国は、今後大きな市場となることが期待でき、どの企業も無視できない存在になっています。そのマーケットを早い段階に押さえ、ブランドイメージを構築することが各企業の重要な経営戦略となっています。中国全土に普及させるためには、まず、経済の中心であり、最先端の情報発信地である上海の〝ワガママ〟で〝おしゃれ〟で〝プライドが高い〟女性に受け入れられることが必要なようです。

                                              2009年1月5日

                                              福島県上海事務所 齋藤 康 

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