中国の家電小売業の現状
- 投稿日:2006.02.16
- 003:上海地域アドバイザーレポート
中国経済の発展により、中国の家電市場もこの数年かつてないほどの繁栄を謳歌している。2006年に入り、家電市場は不動産市場の急速な拡張などに伴い旺盛な新規需要が続いており、家電チェーン店を経営する人の中には、中国の長者番に入る人も数少なくない。
現在、中国大陸に家電チェーン店を展開しているトップ3社―国美電器、永楽家電、蘇寧電器の内、国美電器のCEO黄光裕氏は140億元(2005年データ)の資産で2004年に続き中国の長者番付のトップとなっている。また、永楽電器のCEO陳暁氏も公表資産20億元で中国長者番付の66番目である。
しかし、これと同時に中国の家電産業も不動産市場と同じようなバブル状態に陥っているのではないという見方も出ている。
中国の大中都市の家電チェーン店は、すでに劣悪な価格競争が白熱化しており、店舗数は急速に拡大しているものの、利益率は思いのほか低く、この利益を度外視した急速な店舗展開は、まさにバブル状態に近いといえる。
中国フランチャイズ業協会のデータによると、家電チェーン店業界の経営指標である1平米あたりの売上は、2004年度は前年同期比23%も下がったにもかかわらず、人件費や家賃などのコストは4%~13%も上昇している。
これを証明するように、香港市場に上場している国美電器ホールディングスと深せん証券取引所に上場している蘇寧電器もいずれも上場当初は大変人気があったが、国美電器の株価が2005年6月からの4ヶ月間で51%も下落し、蘇寧電器の株価も2005年4月からの半年間で70%以上も下がった。
大手家電チェーン店の株価の急落は、投資者が今後の中国家電市場の発展動向に疑問を呈していることを象徴している。
また、業界有識者の分析によると、中国大陸の家電チェーン店の発展は順風満帆ではなく、その原因は中国国内の家電製造業の不況にあると指摘している。
1989年から1998年の十年間は、中国の家電製造メーカーの黄金時期であった。
優秀な家電ブランドたとえばハイヤール、TCL、長虹、海信、GREE、格蘭仕、万和、神州などもこの時期に数多く誕生し、強大な製造優位性と厚い経営利益が中国の家電メーカーと家電小売業を急速に成長させた。
しかし1990年代後半に外資系家電メーカーの高品質、低価格路線との激しい競争が発生し、コスト優位性の喪失と新製品の研究開発力の制約(物まねの限界性)が、中国の家電企業の発展を妨げるようになり、その後は大変熾烈な価格競争の時代となった。
2005年10月13日の「経済参考新聞」の報道によると、中国大陸の家電企業は近年以来、白熱化する価格戦争で生き残るために、仕事の手を抜き、材料をごまかし、製品の品質を無視した短期間の市場販売戦略に偏り、さらには、芸能人を利用する広告と製品と関連のないおまけ商品を大量に贈呈する方法で、短期販売優先主義に陥り、その結果、消費者の信頼を失い、製品の競争力も自然に喪失してしまったという。
このため家電チェーン店の大部分の利益を占める国産家電の売上にも影響が出ており、家電製造メーカーの利益構造が変わらない限り、価格競争で利益の「すきま」がますます狭くなる家電チェーン店もこの泥沼から抜け出すことが難しい情況となっている。
中国がWTOに加盟してから速くも4年が経つ。2004年12月11日に中国の小売業は外資に対して正式に解放されたが、このことは中国の家電流通業界に大きな変革をもたらすことは確かである。
三大家電販売フランチャイズグループは、ローカル経営、市場経験、知名度で一定の時期内においてはまだ外資系企業と互角に戦えると思われるが、長い眼で見ると「BEST-BUY」を代表とする優良な物流システムと利益最大化に適応している経営体制を持つ海外の大手家電流通企業が、企業買収や合併などの手段で中国の家電小売市場に進出することでこれまでの構図が変わることは確実と思われる。
参考資料:
- 2005年10月24日 人民網報道
- 2005年11月29日 深せん晩報報道
- 2005年11月30日 新浪科技評論
福島県上海事務所
経済アドバイザー 仲 琪