プラスチックのリサイクルビジネス
- 投稿日:2005.07.12
- 003:上海地域アドバイザーレポート
福島県上海事務所が2004年7月23日に正式に設立されてから早くも1年が経ちました。
事務所は福島県の中国における窓口として観光客誘致、経済交流などの面でその活動は日々活発になり、また今回は設立1年を機にホームページも一新され、今後は福島県と中国の経済交流の架け橋、福島県向け中国の経済情報を発信するプラットフォームとなることが大いに期待されています。小生は福島県上海事務所で非常勤の経済交流アドバイザーを務めており、おかげさまで今回の新しいホームページで小生の執筆するコーナーが設けられ、これからは毎月1回のペースでホットな中国経済情報を福島県の方々にお送りしたいと思っています。このコーナーが福島県企業の皆様に少しでもお役に立てれば幸いに思います。
今回は初めての経済レポートとなりますが中国の廃棄プラスチック輸入のことについてご紹介したいと思います。ご周知のとおり、今年に入って世界の石油相場は急騰し続け、先週のニューヨーク市場では原油の国際取引価格はついに1バーレル61ドルを超え、相場はこれからも一段と上がるのではないかと見込まれています。このため、石油関連製品とりわけプラスチックコンパウンドの価格の上昇も当然避けられません。経済が高度成長を続ける中国は、すでに世界で第二位のプラスチック製品生産国になり、2004年の合成樹脂の消費量の合計はすでに4000万トンに達しています。ところで、プラスチック完成品のほとんどが低価格品であるため、数多くの中国企業はコスト削減のため海外から廃棄プラスチックを大量に輸入しています。これは使用済みのプラスチック製品(たとえば機電製品の外枠、ペットボトル、CD、ゴミ箱、ケースなど)は消毒・洗浄・粉砕・コンパウンド再生をした後にそのままプラスチックの加工原料として再利用でき、一部の廃棄プラスチックの耐熱性や耐久性といった化学性能や理化指標は、普通の新しい合成樹脂原料に比べてもまったく遜色ないからです。2005年5月の中国国内市場の市況によると、ポリプロピレンとABSの価格はすでに18000元/トンと25000元/トンの大台を突破し、2003年の価格に比べてその上昇幅はいずれも60%を超えています。これに対して廃棄プラスチックの輸入価格は相対的に安定しており、現在ポリプロピレンのスクラッチと廃棄物はおよそ6000元/トン前後、廃棄ABSの価格も9000元/トン前後で、その価格はいずれ新しい原料の1/3位です。しかし、ほとんどの廃棄プラスチックは処理された後も非常に良い加工性能と理化指標を持っているほか、輸入関税と運送費用もかなり安いため、現在中国国内では廃棄プラスチックの輸入に対する需要は大変旺盛であると言えます。なお輸入先国別ではアメリカ、日本、オーストラリア、メキシコ、カナダなどが上位に入っています。廃棄プラスチックをコンパウンドとして再生し利用すれば、国内のプラスチック供給不足の問題を解決できるとともに原油を輸入する外貨を大幅に節約するメリットも明らかで、これまで中国政府は海外から廃棄プラスチックの輸入を積極的に進める方針をとってきました。しかし去年の下半期から日本からの廃棄プラスチックの輸入に対して中国税関の態度が大変厳しくなっています。その原因は去年の3月下旬に日本九州のある会社が山東省青島市の不法企業と結託して6000トンの廃棄プラスチックを輸出するときに「バーゼル条約」(注)を違反し、詐欺の手段を使ってわずかな合格品を貨物の最上部に入れ、大量の何の利用価値もない有毒廃棄物を下部にまぎれこませ青島港に輸出し、その結果現地の環境がひどく汚染されることとなりました。この事件は日本側の荷主が中国の税関の検査検疫に対して虚偽の申告を行い、人為的に有毒廃棄物を隠匿したきわめて悪質なケースで1996年に発生したアメリカのある会社が有害廃棄物を紙くずと偽って中国に輸出した事件以来、海外から中国に有毒有害廃棄物を不法に移転し、環境汚染を起こした最も重大な事件であると言われています。このため去年の下半期は中国国家質量検査総局から日本からの廃棄プラスチックの輸入に対する禁止令が発動され、一時期貿易の門が閉ざされました。
今年のはじめにはこの事件について賠償の決着がつけられたため他の国より厳しい検査措置には変わりのないものの日本からの廃棄プラスチックの輸入貿易が再開されました。上記の例外ケースを除いて日本からの廃棄プラスチックは純度が高いため、中国の再生業者の中では大変好評で、その需要も相変わらず非常に高いです。福島県で中国に廃棄プラスチックを輸出しようと考えている企業(もちろんまじめな貿易希望者)がありましたら県上海事務所にご連絡いただけませんでしょうか。福島県と中国における廃棄プラスチック貿易の橋を作れば両地方の経済産業に有益であるだけではなく資源の再生利用による地球の環境保護にも貢献することができ大変有意義なことだと思っています。
(注)「バーゼル条約」
有害廃棄物の国境を越える移動の規制について、国際的な枠組みや手続き等を規定した条約。1989年にスイスのバーゼルで採択された。日本は1993年に加入。
2005年7月12日
福島県上海事務所 仲 琪