中国のノートブックパソコンの輸出事情について

  • 投稿日:2006.11.06
    • 003:上海地域アドバイザーレポート

中国の製造業の高度化、製造能力の向上に伴い、輸出に占めるパソコンや通信関連製品などIT製品の割合が、ここ数年急速に拡大している。

ノートブックパソコンの輸出状況

中国のノートブックパソコンの輸出は、2002年の年間輸出台数が262万台、輸出額が22.02億米ドルで、2001年に比べそれぞれ253%と220.3%という大幅な成長を実現した。また2005年では輸出台数と輸出額はそれぞれ4,135.24万台、299.02億米ドルに達し、いずれも2002年の15倍という驚異的な記録となった。

2006年の今年上半期の中国のノートブックの輸出台数と輸出額は、それぞれ2,182.4万台と162.23億米ドルとなっており、2005年を超える勢いであり、携帯電話と並び輸出金額の最も大きい商品の一つとなっている。

現在、中国のノートブックパソコンの輸出先は世界128カ国以上に及び、主な輸出先は、台数から見れば、トップは米国、続いて日本、ドイツ、フランス、香港の順となっている。特に米国市場は中国のノートブックパソコンの輸出対象国の中で、最も重要な国であり、今年の上半期の対米輸出台数と金額はそれぞれ676.4万台、48.05億米ドルに及び、同期の総輸出台数の31%、総輸出金額の29.6%を占めている。

また、今年に入ってからはインドをはじめロシア、ブラジルなどへの輸出も大幅に増加し、今後これらの国からの需要がさらに増えると予測されている。

中国の生産拠点

ノートブックパソコンの中国での主な生産拠点は、江蘇省の蘇州・昆山地区、広東省の深せん・東莞地区、上海市の松江・浦東地区、福建省のアモイ、浙江省の杭州などに集積している。特に江蘇省の蘇州・昆山地区と上海周辺地区は中国のノートブックパソコンの一大生産・輸出基地となっている。(下表参照)

2006年1-6月まで中国のノートブックパソコンの輸出統計(税関通関別)

区分 1-6月全体 上海税関 南京税関 広東税関 その他
輸出台数(万台) 2182.40 1042.18 731.14 229.00 180.00
割合   47.8% 33.5% 10.5% 8.2%
輸出金額(億米ドル) 162.23 75.89 50.21 23.30 12.00
割合   46.8% 30.9% 14.4% 7.4%
(資料出典:中国機電製品輸出入サイト)

江蘇省の蘇州・昆山地区には、数多くの台湾系ノートブックパソコンのメーカー、たとえば「広達電子」「仁宝電子」、「英業達電子」、「緯創資通」、「倫飛電脳」、「昆達電脳」、「凱博電脳」など一般的にはあまり知られていない会社が多数集まっている。

実際これらの会社はDELL、HP、TOSHIBAなどの有名ブランド企業にOEM生産を行っている会社である。上記台湾系の会社が今から十数年前に蘇州や昆山地区に進出し、電子加工産業に大きく貢献したため、同地区は現在では世界最大のノートブックパソコンの生産基地となったと言える。(下表参照)

区分 1-6月全体 台湾系企業の生産台数と輸出金額 割合
輸出台数(万台) 2182.4 2,176 99.7%
輸出金額(億米ドル) 162.23 161.91 99.8%
(資料出典:中国機電製品輸出入サイト)

IT分野で権威ある調査機構iSuppli社の調査結果によれば、2005年蘇州・昆山地区と上海周辺地区のノートブックパソコンの生産量は、全世界の82.6%を占めたという。特に世界のノートブックパソコン市場の大半を占めているDELLとHPの2社の製品はほとんど同地区で生産されている。

輸出に伴う懸念材料

中国から世界へのノートブックパソコン輸出は、活況を呈しているが、いくつかの懸念材料も存在する。まず、最大の輸出相手国米国では、エネルギー価格・基礎原材料価格の上昇などによる米国経済に減速材料があること。またEU、日本もインフレ上昇を抑えるために金利の引上げを実施すると予測されるので、消費支出が抑制される可能性もあること。

さらには、貿易摩擦による貿易保護主義の台頭も輸出にブレーキをかける。たとえば反ダンピング措置、知的財産権訴訟などの貿易保護措置など輸出に関する法的環境も一層厳しくなると思われる。

たとえばEUは、2006年7月と8月にノートブックパソコンを含む電子製品に対して有害物質を排除する規制命令やリサイクルの可能率に関する規定を発表したことで一部出荷待ちの製品が回収せざるを得ない状況となった。

また、人民元の切り上げ、製品価格の競争による下落などもこれからの輸出に影を落とす要素になっている。

今後も続く中国からの輸出

輸出に伴う多くの問題は存在するものの、中国は今後も世界最大のノートブックパソコンの生産・輸出基地の地位を維持していくと思われる。それは以下の要因による。

  1. IT製品の生産に関するOEM生産の傾向は相変わらず拡大趨勢である。
  2. 中国のIT製品の裾野産業がますます拡大していくことに伴い、物流面・労働力面・技術面における集積メリットがさらに発揮される。このような産業の集積効果は輸出の安定成長にプラスとなる。
  3. インド、ロシア、ブラジルなど新興市場の経済成長による需要の高揚が一部の先進国の需要の減少を解消すること。

iSuppli社の予測によると、全世界のノートブックパソコンの生産量は2005年の6,190万台から2010年には1.41億台まで拡大する。メーカーの中国シフトが一層進む中で2010年までに中国のノートブックパソコンの生産量は1.27億台となり、世界の全体生産台数の90%となる。これからの数年間で中国のノートブックパソコンの輸出成長率は依然、毎年20%台を維持すると推測される。

参考資料:

  • 中国機電製品輸出入サイト
  • 国際商報
  • 中国江蘇サイト
  • 中国企業サイト

                                   

2006年11月6日
福島県上海事務所
経済アドバイザー
仲 琪
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