第20回共産党全国代表大会まとめ     

  • 投稿日:2022.11.30
    • 009:ビジネスニュース
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 今月号は「第20回共産党全国代表大会」についてご説明いたします。

 中国では10月22日に第20回共産党全国代表大会(以下、”共産党大会”と表記)が終幕し、習近平氏の異例の3期目の総書記就任が決定されました。 中国の政治イベントは普段の企業活動の実施に必ずしも直接的に影響を及ぼすとは言い難いものの、同氏の総書記の続投や党大会前後の動向は異例ずくめであり、今後の日中間、或いは現地法人のビジネス活動にも影響を与えるものと考えられます。

 従って、今回は共産党大会や政治体制の仕組みと党トップの選出方法、及び異例ずくめの諸事項等を簡単に紹介するとともに、中国ビジネスに直接的な影響のある今後のゼロコロナ政策の見通しを最後に解説します。

1.共産党大会と政治体制の仕組み

 第1回共産党大会が1921年に開催され、第11回(1977年)以降は5年ごとに定期的に開催されています。 近年は以下の通り、(1)既往の活動運営の総括と今後の政策方針の発表、(2)共産党指導部の人事に直結する中央委員の選出、(3)党規約の改正等を含み、第20回は2022年10月16日~22日まで開催されました。

①既往の活動運営の総括と今後の政策方針の発表:

まず、既往の活動運営の総括として、第18回全国代表大会からの10年間の重大及び歴史的意義のある以下の3つを掲げ、”第1の100年間の奮闘目標”を達成したと総括しました。

➤中国共産党の創立100周年

➤中国の特色ある社会主義の新時代への突入

➤貧困の脱却と小康社会(ややゆとりある社会)の全面的完成という歴史的任務の完遂

 そして、“第2の100年間の奮闘目標”として、経済的な観点からは“高品質の経済発展における新たなブレークスルーの達成”、“科学技術の自立と自己改善能力の大幅な向上”、“社会主義市場経済システムの更なる改善”、“より高いレベルの開放経済の新システムの基本的構築”等々、政策の大方針を謳っています。

②共産党指導部の人事に直結する中央委員の選出:

 共産党大会の最終日に、約200名の中央委員を選出します。翌日に中央委員総会ともいうべき第1回会議が開催され、中央委員から政治局委員24名が、政治局委員から7名が、約14億人の最高指導者ともいうべき政治局常務委員に選出されます。今回の共産党大会では、“68歳定年制”に抵触せず、残留も取り沙汰された李克強首相や汪洋政治協商会議主席等の名前が中央委員の名簿に無く、この時点で引退が明確となりました。

③党規約の改正:

 また、共産党大会では党規約の改正が可能です。今回の共産党大会では、習近平氏の指導的地位をより高める、以下の“二つの確立”の趣旨等を反映した党規約に改正されました。

➤(党は習近平氏を)党中央の核心とし、党全体の核心としての地位を確立する

➤(党は習近平氏の)新時代の中国の特色ある社会主義に関する習近平思想の指導的地位を確立する

 更に、上述した“第2の100年間の奮闘目標の実現”なども、当該党規約に謳われています。

2.異例ずくめとなった共産党大会等の諸事項

 今回の共産党大会前後に発生した、以下の事態も特筆されます。

➤経済指標の発表を延期

 共産党大会の直前に予定されていた、第2四半期の経済統計の発表が延期されました。上海市ロックダウンを始めとした中国の経済活動の回復度合いを見る上でも注目されていた指標の公表延期は異例でした(同大会終了後に各種統計を発表)。

➤共産党大会での慣例踏襲からの変更

 2002年以降、上記の中央委員の選出には68歳定年制(共産党大会時に68歳に達していれば引退)との不文律がありました。 一方で、共産党の組織とは別に、毎年3月に開催される全国人民代表大会(日本の国会に相当)において、既に憲法の改正により、国家主席の任期(従来、1期5年、2期まで)が撤廃されました。 このため、今回の共産党総書記(中央委員の選出)についても、上記の68歳定年制が踏襲されないとの見方が開催前から根強くあり、結果として69歳の習近平氏が3期目の総書記に就任する一方で、前述の李克強氏や王洋氏(共に67歳)が引退し、慣例からの大きな変更となりました。

 さらに、23日開催の第20期一中全会では、習近平氏を共産党総書記・序列1位に、序列第2位に上海市のロックダウンの責任者である上海市書記・李強氏、以下習近平氏の影響力が強いとされる計7名が常務委員に選出された一方で、40代で政治局委員となり、次世代のリーダーと目されてきた共産党青年団出身の胡春華副首相が政治局委員から外れるなど、大幅な変更が見られています。

3. 今後のゼロコロナ政策は?

 このように、異例ずくめの党大会が終了し、この一大政治イベント後の最大の関心事は、ゼロコロナ政策の継続有無と考えます。 ゼロコロナ政策は日本からの出張ベースでの技術支援や、現地法人運営等々、日中間のビジネスに直接的に影響を及ぼします。 一部では共産党大会の終了後にゼロコロナ政策からの政策変更や撤廃を期待する向きもありましたが、現時点での各種の公開情報を基にすれば、少なくとも当面は堅持される可能性が高いと考えます。

 中国の水際対策では、11月11日に発表されましたが入国時の隔離措置期間は8日間に短縮され、現時点では部分的な緩和はあるものの上述の通り、ゼロコロナ政策の堅持が強調されるなど、中国への入国・国内移動に伴う不確実性は高止まりしたままと考えられます。実際に部分的な緩和政策発表後に中国国内の新規感染者増加に伴い、国内の各地では新たな規制措置が発表されております。従い、少なくとも現時点では、これらの不確実性を念頭に、各種の対応や決定を行う必要があります。

 また、当大会報告書は下記サイトで日本語訳がされておりますので、お時間のある際にご参照ください。

中国共産党第20回全国代表大会における報告(全文) (peoplechina.com.cn)

・以下に全体のタイトル及び習近平国家主席演説15項目について挙げておきますので、報告書確認の際の目安としてください。

<全体のタイトル>

中国の特色ある社会主義の偉大な旗印を高く掲げ、社会主義現代化国家を全面的に建設するために団結奮闘しよう!! 

<習近平国家主席演説の15項目>

1.過去5年の活動と新時代の10年の偉大な変革
2.マルクス主義の中国化・時代化の新境地を切り開く
3.新時代の新征途における中国共産党の使命・任務
4.新たな発展の形の構築を加速し、質の高い発展の推進に力を入れる
5.科学的教育興国戦略を実施し、人材による現代化建設へのサポートを強化する
6.全過程の人民民主を発展し、人民主体を保障する
7.全面的な法に基づく国家統治を堅持し、「法治中国」の建設を推進する
8.文化への自信・自強を推し進め、社会主義文化に新たな輝きを築く
9.民主福祉を増進し、人民生活の質的向上をはかる
10. グリーン発展を推し進め、人と自然の調和的共生を促す
11. 国家安全保障体系・能力の現代化を推し進め、断固として国家安全保障と社会の安定を確保する
12.中国人民解放軍創立100周年の奮闘目標を達成し、国防・軍隊現代化の新局面を切り開く
13.「一国二制度」を堅持し・整備し、祖国の統一を推進する
14.世界の平和と発展を促進し、人類運命共同体の構築を推進する
15.揺るぐことなく全面的な厳しい党内統治を実行し、新時代の党建設の新たな偉大なプロジェクトをいっそう推し進める

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2022年11月29日  福島県中国ビジネスサポートデスク

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