上海福街道をゆく

  • 投稿日:2012.07.30
    • 上海の風(スタッフレポート)

日本や中国では、「福」は、縁起いい文字として人々に愛されてきた。福島県も「福」があるだけあって、初めて見た中国人にも親近感を覚えるほど、実にいいネーミングだ。
上海にも頭文字に「福」が付く道路名が多い。町の住民生活に親密に関わりながらも、独特の雰囲気で人々を魅せるそれらの道々を「福街道」と名付けたい。
繁華街の片隅に潜み、古き時代の風貌をそのまま残した道もあれば、町そのもののシンボルとなった道もある。今回は、上海の中心部に点在する3つの「福街道」をピックアップし、その街情報をお送りいたします。

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■福佑路――客足絶えない小商品天国
言わずと知れた上海の名所、豫園から少し北に位置する、上海の小売業の老舗である「福佑路小商品市場」は終日賑わっている。福佑路はもともと、路地裏の小さな露天市場に過ぎなかったが、改革・開放政策で自営者が急増した1990年代には、ここで商品を仕入れ、上海全域で販売するというルートができ始めた。替えボタンやミシン針などといった、デパートではなかなか見つからない商品もここではいとも簡単に格安で入手できるのも市場の魅力だ。 21世紀に入り、福佑路は口コミで全国的に有名となったことから、商家が店舗をビルに移し、市場がリニューアルオープンした。豫園商圏に近いという絶好の立地条件から、海外からの観光客にも絶大な人気を誇る。中国旅行のおみやげを購入するならここはオススメ!
→ここが注目!
中国では、単価の安い日用雑貨を「小商品」と呼ぶ。

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■福州路――行列の出来る歴史的文化街
外灘から上海市の中心、人民広場へとつながる東西方向の福州路。一見どこにもありそうな道路だが、歴史の吐息を身近に感じる。特筆すべきは「老上海」の建築だ。福州路界隈はかつて米英租界の管区にあることもあり、西洋風の建物はかなり多い。外灘側に立って交差点で立ち止まると、その時代にタイムスリップしたかのように感じずにはいられない。1920年代~30年代に建てられたビルたちは幾多の歳月をたってもなお、この街とともに生きている。
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福州路209号、1925年建造の旧「米国花旗総会」(アメリカンクラブ)である。アメリカン風建築を真似た様式とのことで、1994年に優秀歴史建築の指定を受けた。今現在は、上海市公安局機密档案局の敷地となり、一般人には到底中身を伺うことができない。しかし、時代の潮風と現代のミステリアスと居合わせたことができるというのは、実に心地良いかもしれない。

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■福建路――「中華第一スクランブル交差点」とちんちん電車
世界でも有数な観光スポット「南京路歩行街」。中華第一街の別名を持つ南京路ホコ天は、福建路との交差点で立ち止まると、流れる人の波はなぜか東京・渋谷のスクランブル交差点を彷彿させる。チーンチーンと鳴り響くホコ天専用の遊覧車は、目の前の光景とは別の意味で繁華街の賑やかさを増している。伝統と流行の融合されたホコ天では、ブランド専門店の片隅に、地元ならではの老舗店もいまだに根強い人気を誇っている。「上海張小泉刀剪店」は1663年創業と言われ、包丁・ハサミ一筋で何世代にもわたって愛され続け、売上は長年業界一位のシェアを占めている。特に「爪切りトラベルセット」は、国内外の観光客にも大人気という。
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南京路ホコ天を走るちんちん電車風の遊覧車。レールこそ敷かれてないものの、中に座ると案外、本家の気分を味わえるかもしれない。運営区間はホコ天全長の1,033メートルで、運賃は一人2元(約25円)。夜のホコ天で遊覧車に乗り、鮮やかな繁華街の夜景を車窓越しに眺めながら、至福の一時をお過ごしではいかがですか?

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今回筆者がピックアップした3つの「福街道」は、上海という町の色んな側面を象徴するシンポルとも言える。時代は移り変わっても、「福街道」は一種の文化として、各世代が伝承し続け、町の住民や旅人の心を潤すのに間違いない。

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